心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 マリアが上手に話せないから……。
 どうしよう。せっかく来てくれたのに、帰っちゃうかも……。



 マリアはグレイが帰るたびに寂しく思っていた。
 来ない日もずっと静かに待っている。屋敷の扉が開く音が聞こえないかと……。



 今日また来てくれたのに、マリアはちゃんとお話できない……。
 レオと話しているお兄様は楽しそうだったのに……。



 マリアがどうしていいのか困っていると、グレイが立てていた自分の膝に頭をつけて盛大なため息をついた。
 自分に対する呆れた態度なのかと思ったマリアは、内心とてもドキッとした。


「……やっぱり俺はうまく話せないみたいだ。レオを今度連れて来る」

「…………」


 グレイの予想外の発言に、マリアは目を丸くした。
 自分が考えていたことと全く同じことを言われたのだから、驚くのも無理はないだろう。
< 149 / 765 >

この作品をシェア

pagetop