心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
マリアが上手に話せないから……。
どうしよう。せっかく来てくれたのに、帰っちゃうかも……。
マリアはグレイが帰るたびに寂しく思っていた。
来ない日もずっと静かに待っている。屋敷の扉が開く音が聞こえないかと……。
今日また来てくれたのに、マリアはちゃんとお話できない……。
レオと話しているお兄様は楽しそうだったのに……。
マリアがどうしていいのか困っていると、グレイが立てていた自分の膝に頭をつけて盛大なため息をついた。
自分に対する呆れた態度なのかと思ったマリアは、内心とてもドキッとした。
「……やっぱり俺はうまく話せないみたいだ。レオを今度連れて来る」
「…………」
グレイの予想外の発言に、マリアは目を丸くした。
自分が考えていたことと全く同じことを言われたのだから、驚くのも無理はないだろう。