心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
 ふと気づくと、いつの間にか結構な時間が経っていた。
 もういつイザベラが帰って来てもおかしくない時間になっている。



 戻らなくては。あの女に見つかったら面倒だ。



「いいか。俺がここに来たことは誰にも言うな」


 子どもはコクリと頷く。

 グレイは静かに立ち上がると、子どもを一瞥してから部屋を出た。
 この時のグレイには、子どもを解放してあげたいという考えなど全く浮かんではいなかった。
 
 別邸を一通り歩き、自分が開けた扉などを念入りに確認して来た時と同じような状態に戻す。

 そして別邸を出て扉に鍵をかけると、屋敷まで走って戻った。

 不必要な走りなどいつ以来だったのか。
 高揚した気持ちがまだ収まっていないのだと、グレイ自身は気づいていない。
< 15 / 765 >

この作品をシェア

pagetop