心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「マ、マリアも……」

「え?」

「マリアも上手にお話できなくてごめんなさい……」

「…………」


 そう謝ると、グレイは少し考えたような顔をしてからマリアの頭に手をポンとのせた。
 そして、困ったような……でも嬉しそうな顔で、ボソッとつぶやいた。


「俺達、こんな家で育ってる者同士……似ているのかもな」


 マリアには、グレイが笑っているように見えた。
 いつも険しい顔をしているグレイの笑顔を見て、マリアも自然に笑顔になる。

 優しい言葉をかけ続けてくるわけでもないし、ずっと笑顔でもいるわけでもないのに、なぜかマリアはグレイと一緒にいると嬉しくて安心感があった。

 まるで雛が最初に見た相手を母親だと思うように、初めて情を向けてくれた相手だから懐いてしまったのか。
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