心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 ガイルからこんなことを言われたのは初めてであった。

 グレイはどう答えようか迷った。
 子どもの頃からずっと仕えてくれた存在とはいえ、まともな会話もなく必要最低限のやりとりしかしていない相手である。

 どこまで信用できるのかもわからない。

 グレイは、イザベラの名前を出さずに正直に話してみることにした。
 これを言うことで、ガイルがどんな反応をするのか、どんな返答をするのかを確認したかったからである。


「……人を監禁したいんだ」

「そうですか。地下室に牢のような部屋がありますが、普通の部屋と地下室とどちらになさいますか?」

「…………」


 顔色を変えることなく即座に返答してきたガイルに驚き、グレイは呆気にとられた。
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