心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
ガイルは背筋をまっすぐに伸ばし、両手を体の前で合わせた姿勢のままグレイからの指示を待っている。
「……止めないのか?」
「なぜ止めるのですか? あなたの母君も同じことをされているではないですか」
「!?」
グレイはガイルから視線を外さないまま、ガタッと椅子から思いっきり立ち上がった。
身体が机にぶつかり、カップが倒れ……そうになったところをガイルが素早い動きで防ぐ。
「……知っているのか?」
「何をでしょうか?」
「いつから知っていたんだ? なぜ密告しない?」
「私にとって1番大事なのはこのヴィリアー伯爵家です。あなたの祖父である私の友人が大切にしていた称号……それを守るのが、私の仕事です」
淡々と話すガイルと、しばらく見つめ合うグレイ。