心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「……この屋敷で、他にマリアの存在を知っている者はいるのか?」

「おりません」

「マリアの食事などはどうしているんだ?」

「キーズという執事が毎日取りに来ております。その日のイザベラ様とグレイ様の残り物を持って行っています」

「残り物……? ……ふざけてやがる」


 グレイはチッと舌打ちをした。
 その後は何も喋っていないというのに、心を読んだかのようにガイルが口を挟んできた。


「おやめになった方が良いかと思います。解放されるまで今までと変わらずにしておかなければ、グレイ様が少女の存在に気づいたと知られてしまいますよ」

「……何も言ってないだろ」

「失礼いたしました。少女にお食事を運ばれるのかと」

「…………」


 グレイはいつも無表情で、何を考えているのかわからないと周りからよく言われていたが、ガイルには全てお見通しらしい。
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