心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
居心地の悪いような、でもどこか安心してしまうような、グレイは不思議な感覚に包まれていた。
ガイルの自分を見つめる目が、まるで祖父が孫を見守るかのような……そんな温かな目をしている気がしたからである。
「……とりあえず、今は何も動かない。あの女をどうしたらいいのか、しっかり決めてからでないと下手に動けないからな」
「かしこまりました。何か御用ができましたらお申し付けください」
ガイルはペコリとお辞儀をすると、グレイの部屋から出て行った。
深く聞いてきたり長く話し込んだりしない。本当に不思議な執事だ。
グレイはふぅ……とため息をついて、ガイルが用意してくれた紅茶を一口飲んだ。
そういえば、頼んでもいないのにいつも欲しいと思ったタイミングで紅茶や食事が運ばれてきていたことに気づく。
自分がどれほど使用人に興味がなかったのかを、グレイは改めて知ったのである。