心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 グレイがハッと気づくと、レオが目の前で顔を覗き込んできたところだった。
 ふわふわの猫っ毛が肌に触れて、くすぐったく感じるほどに近い。

 グレイは黙ったままレオの顔をぐいーーっと引き離した。

 イザベラをどうするかについて、レオには何も言っていない。
 たとえ冗談でも、監禁という言葉には大反対するのが目に見えているからだ。

 純粋なレオはあまり相談相手にはならない、とグレイは思っている。


「……はぁ。今日は少し早めに別邸(あっち)へ行くか」

「そうしよう!」

「私も参ります」

「うわあっ!!」


 いつ部屋に入ってきたのか、いつの間にかレオの後ろに執事のガイルが立っていた。
 背後から突如聞こえたその声に、レオは飛び上がるほど驚き、目に涙を浮かべている。
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