心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 手足には無数の切り傷やアザがあり、頬にも傷があるのが見える。

 学園で喧嘩をした学生が傷だらけになった姿を見たことがあるが、それ以上にひどい状態だとグレイは思った。


「マリア!! 起きろ!!」

「マリア! 大丈夫!?」


 グレイとレオが格子に手をかけて大声を出すが、マリアに反応はない。
 苛立ったグレイは格子を思いっきり蹴った。
 ガシャン!! という音が部屋に響く。


「くそっ」

「グレイ! この檻の鍵はないの!?」

「そんなのどこにあるか……」

「ございます」


 慌てている2人を見守っていたガイルが、手を前に差し出しながらしれっと口を挟んできた。

 その手の上には、小さな鍵が2つ置かれている。
 1つは足についた鎖の鍵だとすぐにわかった。

 なぜすぐに出さなかったのかと怒鳴りつけたい気持ちを押さえ、グレイは乱暴に鍵を受け取るとすぐに檻を開けた。
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