心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 身をかがめて中に入り、マリアの身体を起こして眼帯を外す。

 身体に触れた瞬間、熱が高いのが感じ取れた。
 マリアは意識が朦朧としているらしく、目を閉じたままだ。


「マリア!」

「……! すごく熱い……。これ、すごい熱なんじゃ……!」


 レオがマリアの手を握りしめて、あわあわと焦っている。
 グレイはレオの質問には答えず、足についた鎖を外してマリアを抱きかかえると、すぐに檻から出た。

 部屋にはしばらく使われた形跡のないベッドが置いてあったが、マリアの力が届いていたのかとても綺麗な状態だった。

 グレイはそのベッドにマリアを下ろす。

 どこから出したのか、ガイルが新しいランプをベッドの近くに置いた。
 レオはベッドの横に膝をつき、マリアの手を握りしめながら涙目で声をかけ続けている。


「マリア……!」
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