心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「そこまでわかってるなら、止めても無駄だということもわかってるはずだ。何度も言わせるな。……どけ」
「…………」
とても13歳とは思えない、凄みのある低い声でそう言われたガイルは、ふぅ……と諦めたようなため息をついて、塞いでいた自分の身体を退かせた。
グレイがそのまま部屋を出ていくのを、マリアとレオは黙って見ていることしかできなかった。
ガイルが嬉しそうに口角を上げたのを、マリアは見た。
優しそうな、温かい目でグレイを見送っている。
「……本当に……アーノルドにそっくりだ」
ガイルがボソッと呟いた声は、グレイには届いていなかった。