心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「なぜわかった!?」

「本日イザベラ様が参加される予定だった夜会は、直前で中止の連絡がきておりました。執事のキーズがその確認を怠ったようです」



 夜会が中止になったことも、キーズという執事がそれに気づいていないこともわかっていて、止めることなくイザベラを送り出したのか……このジジイ。



 平然としているガイルを、グレイは呆れたような顔で睨め付けた。

 でも、これですぐに直接話すことができる。
 グレイは急いで階段を下りて、別邸の玄関から外に飛び出した。

 突然現れたグレイに驚いて、御者は別邸前で慌てて馬車を止めた。


「どうしたんだ? 危ないではないか…………グレイ様?」


 馬車から降りてきたキーズが、グレイを見て目を丸くしている。
 こんなに近くで会ったことなどないのだから、驚くのも無理はないだろう。
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