心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 ガイルは別邸の中から出てきていないが、どこかでこの様子を見ているに違いない。


「グレイ様……このような場所で一体何を……」

「グレイですって?」


 キーズの言葉を聞いて、馬車の窓からイザベラが顔を出した。
 イザベラとこの距離で会うのもいつ以来だろうか。

 
「あら、グレイ。まるで私を待っていたみたいね。母である私に何か用なの?」


 美しい顔だが、昔のような優しく温かな雰囲気はなくなっている。
 笑顔で話しかけてきてるが、その目が笑っていないこともわかる。

 久しぶりに母と真正面から向かい合っているというのに、グレイには嫌悪感しかなかった。

 少しでも早く離れたい。
 無駄な話などしている暇はない。

 そう感じていたグレイは、すぐに要件を伝えた。
< 188 / 765 >

この作品をシェア

pagetop