心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
ガイルは別邸の中から出てきていないが、どこかでこの様子を見ているに違いない。
「グレイ様……このような場所で一体何を……」
「グレイですって?」
キーズの言葉を聞いて、馬車の窓からイザベラが顔を出した。
イザベラとこの距離で会うのもいつ以来だろうか。
「あら、グレイ。まるで私を待っていたみたいね。母である私に何か用なの?」
美しい顔だが、昔のような優しく温かな雰囲気はなくなっている。
笑顔で話しかけてきてるが、その目が笑っていないこともわかる。
久しぶりに母と真正面から向かい合っているというのに、グレイには嫌悪感しかなかった。
少しでも早く離れたい。
無駄な話などしている暇はない。
そう感じていたグレイは、すぐに要件を伝えた。