心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 まだ13歳のグレイだが、同年代に比べて背も高いし武術も得意であった。
 力の弱いイザベラなら余裕で捕まえられる自信がある。

 イザベラは頭をガクンと下に向けてうつむいたかと思えば、突然手足がプルプルと震えだした。
 怒りを堪えている……いや、むしろ溜めているように見える。


「どうして……母である私に反抗して、あの子を庇うのよ……。グレイまで……」

「マリアは俺の妹だ」

「妹? なに言ってるのよ。あの子はジュード様の子どもじゃないわ!」

 
 妹という言葉に反応して、イザベラがバッと勢いよく顔を上げた。
 今まで見たことがないくらいの鋭い目でグレイを睨みつけている。


「知ってる。だが、これだけこの家に貢献していたなら、家族と言ってもいいだろう。すでに俺の中では、お前よりもよっぽどマリアのほうが家族だ」

「なんですって……! 私よりあの子を選ぶの?」

「当然だろ」


 グレイの返答に、イザベラはなぜかふふふ……と笑い出した。
 鬼のような形相から一転しての笑顔だったので、グレイはとうとうイザベラが本格的に狂ったと思った。
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