心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「あの子が檻から出て、グレイに家族のように大切にされながら生きていく……なんて、そんな姿見たくはないわ。そうなるくらいなら、あの子を今すぐ死なせてしまいましょう」
「なんだと?」
「ずっとそうしたかったの……本当は。利用できると言われたから利用してきたけど……本当はもっと早く、殺してしまいたかった……」
自分に酔いしれているかのように、イザベラはゆっくりと語っている。
でもその怪しい顔つきで、言っていることが事実なのだとわかる。
この女は本当にマリアを殺すつもりだ……!
「今日はちょうど月も隠れているから、聖女の治癒も使えない……。絶好の聖女殺しの日よね」
妖艶な美しさでつぶやいたイザベラを見て、グレイはゾクっと背筋に悪寒が走った。
目の前にいる人物は、本気で今から人を殺そうとしている。
それも楽しそうに。