心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「聖女を解放するのも、殺されるのも困ります。イザベラ様を捕まえるというのであれば、私がグレイ様を捕まえますよ」

「使用人が俺を捕まえるだと?」

「はい。主人を守るためですから」


 キーズがニヤ〜と嫌味っぽい笑みを浮かべた。

 主人のためというのは建前で、本音は生意気で気に入らないガキを懲らしめてやりたい……って考えてるのが見え見えである。

 キーズはどちらかというと、体格に恵まれているとは言えない貧相な男である。

 それでもグレイよりも背が高いし、力もグレイよりあるだろう。
 ナイフで怪我をするのは怖くはないが、自分が捕まりイザベラが逃げるのは勘弁だ。

 グレイは無計画のままここに来てしまったことを少し後悔していた。
< 194 / 765 >

この作品をシェア

pagetop