心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「ガイル! 主人である私を裏切る気なの!?」
「イザベラ様。あなた様はこのヴィリアー伯爵家の主人ではありません」
「なんですって!?」
キーズの後ろから口を出してきたイザベラを、ガイルが一蹴した。
まさか主人ではない発言をするとは思っていなかったので、グレイは驚いてガイルを振り返った。
同じように驚いた様子のイザベラは、顔を赤くしてガイルを睨みつけている。
「……キーズ、彼はもうこの家の執事長ではないわ。あの老人を捕まえてしまいなさい」
「……かしこまりました」
イザベラに命令されたキーズが、ナイフを前に構えながら一歩ずつ近づいてくる。
ナイフを向けられているというのに、ガイルは手を後ろで組んだままその場から動かず、ジッとキーズを見ているだけだ。