心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「何してる!? 逃げろ!」

「主人を置いては行けません。それに、逃げる必要もありません」


 グレイが声を荒げて命令したが、ガイルは言うことを聞かない。
 なぜかグレイのことを主人呼ばわりしている。

 様子を見ていたキーズが一気に走って距離を縮めてきたので、グレイは「ガイル!」と大きな声を出した。

 ガイルが刺されるか捕まるかしてしまう……と思っていたグレイは、その後の光景に目を丸くした。

 ガイルはナイフを持ったキーズの右手に手刀を振り落とし、そのままその手を捻って背中に当てる。
 ナイフは地面に落ちて、キーズが悲痛の叫びを上げた。


「ひぎっ……!! い、いた……おっ折れる! 折れる!!」

「これくらいじゃ折れないから平気だ」


 ガイルがあっさりと言ってのける。
 あまりのガイルの早技に、思わずグレイとイザベラはポカンとしてしまった。
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