心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
 グレイがその場から動けずにいると、先ほど別邸に入って行った老人とその執事が出てくるのが見えた。
 その後ろからは笑顔のイザベラとネズミ顔の執事が出てきたが、あの子どもの姿はない。
 
 老人貴族と執事の2人が歩いている。
 その光景を見て、グレイは驚いた。

 先ほど執事に支えられながら足を引きずっていた老人が、今は1人で元気に歩いている。
 引きずっていた足は、何事もなかったかのようにスタスタと歩を進めている。


 「……どういうことだ!?」


 間違いなく、老人の足は治っている。
 なぜこの短時間であそこまで回復しているのか。別邸の中で、一体何をしていたのか。

 その謎に、先ほどの光が関係しているはずだ。
 そして、その光にはあの子どもが関係しているに違いない……グレイはそう確信していた。



 今夜も別邸に忍び込もう。
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