心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「グレイ! 大丈夫か!?」
グレイが苦戦していると、階段の上からレオの声が聞こえた。
階段上から覗いているような気がするが、暗くて姿は見えない。
マリアについてくれていたレオだが、屋敷の玄関から聞こえてくるグレイとイザベラの声に驚いて、様子を見に来てくれたのだろう。
「レオ! 手伝え!!」
「わ、わかった!」
「離して!!」
レオは急いで階段を下りてくるなり必死にイザベラを押さえようとしてくれたが、なかなかうまくいかない。
グレイの母であることや顔から血が出ていることに動揺していたため、あまり力を入れられないようであった。
2人に邪魔されても、イザベラは諦めずに階段を上がろうとしている。
その時、階段の上からまた声が聞こえた。小さな少女の声が……。
「お兄様……?」
「……! マリア!」