心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 グレイが顔を上げると、いつの間にかすぐ近く……階段のほんの上のほうに、マリアが立っているのがうっすらと見える。

 暗闇に慣れてきていたため、表情まではわからないがなんとなくは見えるようになっていた。

 マリアの登場に、イザベラが歓喜の声を上げる。


「ああ!! 来てくれたのね! 治して! 今すぐ私を!!」

「…………」

「さぁ早く!!」

「…………」

「なに黙ってるのよ!! 早くしなさい!!」


 何も答えないマリアに、イザベラがイライラとした口調で怒鳴り散らしている。
 黙っていることを注意されたマリアは、小さく声を出した。


「……治せない」

「なんですって!? 私の言うことが聞けないと!?」

「ちがう……。マリア、力使えないから……」

「なっ……!?」


 グレイとレオを引き離そうと、往生際悪く暴れていたイザベラの動きがピタリと止まった。
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