心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 グレイはふぅ……と一息つき、目の前にいるイザベラに告げる。


「本気で気づいてなかったのか? 今日は月がない。聖女の治癒は使えない」

「治癒の力が使えない……? じゃあ……この傷はどうすればいいのよ……」

「さあな。(はく)がついていいんじゃないか?」

「……!!」


 グレイがニヤッと笑いながらそう言うと、カッとしたイザベラが再度暴れようとした。
 改めて捕まえている手に力を込めた瞬間、いきなりイザベラがガクッと意識を失って倒れかけた。


「うおっ!?」


 レオが間抜けな声を出して受け止めようとしたが、イザベラの後ろに立っていた人物が腹部に手を伸ばしその身体を支えた。

 軽々しく片手でイザベラを持ち上げている。


「……ガイル!」
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