心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「大丈夫ですか、グレイ様?」
「俺は大丈夫だが……。あのネズミ執事はどうした?」
「拘束して馬車の中に詰めておきました」
「……今、お前……この女に何かしただろ?」
「いいえ、まさか。執事である私が、雇い主様に手を出すわけないでしょう」
「…………」
しれっと答えているが、間違いなく気絶させるために何かしたはずである。
暗闇の中をうまく利用しやがって……とグレイは呆れたようなため息をついた。
「お兄様……」
「!」
マリアの声に、グレイはすぐに振り返った。
さらに階段を下りて来ていたらしく、マリアは数段上……グレイのほぼ目の前に立っている。