心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「マリア。熱があるのに動いて平気なのか?」
「大丈夫……」
そう言いながらもふらふらと階段を下りているマリアを抱き上げる。
先ほど檻から出した時は気づかなかったが、とても軽くて華奢な身体にグレイは眉間に皺を寄せた。
「……ガイル、すぐに戻るぞ。その女は外から鍵がかかる部屋に入れておけ」
「かしこまりました」
「レオ、行くぞ」
「う、うん……。お母さん、大丈夫なの?」
「ガイルに任せておけば平気だ」
グレイはマリアを抱えたまま別邸を出た。
外に出た途端、マリアが小さな声で「わぁ……」と嬉しそうな声を出したのを、グレイは聞き逃さなかった。
「どうした?」
「あっ……あの、外に出たの初めてだから……」
「……そうか。熱が下がれば、昼間も外に出してやろう」
「ほんと?」
「ああ」
マリアがふふっと笑った。
その会話を聞いていたレオが、やけに嬉しそうな声で間に入ってくる。