心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
ジュード卿の頃から数年間、1度も密告されなかったのは、おそらくジュード卿が何か貴族達を押さえつけられるだけの弱味を握っていたからに違いない。
そしてそれをイザベラもうまく利用しているのかは不明だ。
ジュード卿であれば管理できていた貴族達を、イザベラが制圧できているとも思えない。
裏切られてもおかしくない。
そんなことに今更気づいたところで、もう遅い……とグレイは自分の愚かさを呪った。
もし本当に警備隊の向かっている先がこの家ならば、それは聖女が目的に決まっている。
グレイは無意識に、マリアを抱えている手を強めた。
マリアは不思議そうな顔を向けている。
そんなマリアに向かって、グレイは深刻そうな声で言った。
「……マリア、もしここに誰かやってきたら、お前は寝たフリをしてろ。決して目を開けてはいけない。わかったな?」
「わかった」