心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「悪いけど、君達もここに残ってくれるかな? ……妹さんは寝ているのかな?」


 1人監視役で残った若い騎士が、マリアを見て言った。

 マリアはグレイに言われた通り、目を瞑って寝たフリをしている。
 グレイの肩に顔を埋めるような体勢のため、マリアの顔の傷には気づいていないらしい。


「寝ています」

「そうか。それで、こんな夜遅くに、なぜ君達は外に出ているのかな? ここに来ていたの?」


 若い騎士は、別邸を指差しながら聞いてきた。
 どこまでわかっているのか……すでにマリアのことを疑っているのか、見当がつかない。

 別邸の中にはガイルと拘束されたイザベラがいるはずである。



 ここで嘘をついても意味はないか?
 聖女の監禁が王宮に知られたらどうなる?
 当主であるイザベラの失態として、ヴィリアー伯爵家が潰される。

 そして聖女であるマリアは王宮に奪われる。
 ……そうなってしまうのか?
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