心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 騎士達から団長と呼ばれている男性が、一歩前に踏み出しながら言った。
 視線はずっとマリアに向けたままだ。


「正式には……な。コイツは父の愛人の娘だ」

「なるほど。お顔を拝見させてもらえるかな?」


 騎士団長は一歩ずつ近づいてくる。
 グレイがマリアをぎゅっと抱きしめた時、その様子を冷静に見ていたガイルが突然声を出した。


「そのお方は間違いなく聖女様である。気安く触るのはご遠慮いただきたい」


 その言葉に、騎士団長は足を止めた。
 半信半疑だった騎士達の目が、キラキラと輝いたのがわかる。

 伝説の聖女を崇めた視線が、マリアに集中した。
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