心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「ヴィリアー伯爵家の当主はそちらにおられるグレイ様です。イザベラ様ではありません」

「それはあなたの感情的な話ではなく……ですか?」

「もちろん。正式な書類も全てグレイ様が当主となっていますよ。まだ学生であることから、グレイ様からの委任状を預かり、私が代わりに経営管理しておりましたが」

「そんな……」


 当の本人だというのに、グレイも他の騎士同様呆気に取られた顔をしたまま立ち尽くしている。



 俺がこの家の正式な当主? 委任状?



 ジュード卿が死んだと報告された後、息子としていくつかの書類にサインがほしいと言われたことを思い出した。
 あの頃は全てに興味がなく、書類内容をよく確認することなくサインしていた。



 それがまさか、爵位を引き継ぐための書類だったのか?
 ではイザベラが当主だと思い込んでいたのも、ただの勘違い?
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