心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「お部屋を変えてお話をされますか?」

「いや。ここでいい」


 ガイルからの質問に、グレイはマリアの寝顔を見つめながら答えた。
 ガイルは「かしこまりました」と言って、グレイとレオの分の紅茶を淹れ始める。

 
「……それで、俺が当主というのはどういうことなんだ? お前が自分の意思で勝手に決めたのか?」

「いいえ。アーノルドからの指示でございます。ジュード様が亡くなった際はグレイ様に爵位を継がせるようにと、遺言を授かっていたのですよ」

「ではなぜそれをイザベラや俺に言わなかった? 俺があの書類をまともに読んでないことも、お前ならわかっていただろう?」

「反対されると思ったからです」

「何?」

「あの頃のグレイ様なら、反対されてすぐにイザベラ様に爵位を譲ってしまうと思ったので、黙っておりました」

「…………」


 悔しいが、その通りだとグレイは納得した。
 あの頃自分が当主だなんて言われたなら、そんな面倒はごめんだと拒否していただろう。
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