心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「おい。起きろ」


 グレイが声をかけると、子どもの手がピクリと動いた。
 起きたのであろうことがわかる。子どもはゆっくりと身体を起こし、こちらを向いた。

 両目は相変わらず眼帯で隠されているので、子どもにはグレイの姿は見えていないはずだ。
 それでも声や気配でわかるのか、子どもは真っ直ぐにグレイのほうを向いている。

 夕方イザベラがこの別邸を出てからは、この子どもはずっとこの場所に1人でいたはずである。
 それなのに、突然の訪問者に驚きもしない。

 鈍いのかバカなのか……俺と同じように感情が破綻しているのか……と、グレイは思った。
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