心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「マリアの熱は?」
「明け方には下がりましたので大丈夫でしょう。目が覚めたなら、もう聖女の力も使えるようになっているかと思います」
「そうか」
腕に巻かれた包帯や、顔にある傷が痛々しい。
ふと、グレイはイザベラの昨晩の姿を思い浮かべた。
そういえば、あの女も顔に大きな傷を作っていた。
マリアに治してもらう前に連れて行かれたから、目が覚めた時にまた暴れそうだな……いい気味だが。
その時マリアがうっすらと目を開けた。
昨日よりも少し明るい黄金の瞳が、薄暗い部屋の中でキラッと輝いた。
「マリア。起きたか」
「お兄様……」