心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 マリアがそうつぶやいた瞬間、マリアの身体から黄金の光が溢れてきた。
 明るいが眩しくはないその温かな光は、ほんの一瞬で消えてしまった。

 しかしマリアの顔の傷が綺麗さっぱりなくなっていることで、十分力を発揮できていたのだとわかる。


「ほぉ……。これは美しいですな。心なしか、私の身体の疲れも取ってくれたようです」


 ガイルが感心したような声を出した。
 身体の疲れが取れたように感じたのは、グレイも同じである。
 治癒の力のおこぼれに(あずか)れたらしい。

 腕や足に巻いてある包帯を取ってみたが、他の傷も全て綺麗に治っていた。


「やはりすごいな。風呂に入っていないのに、身体や髪までスッキリしている。同時に浄めの力も出ていたのか」

「ふろ?」


 グレイの言った言葉をマリアが聞き返してきた。
 何も知らなそうなマリアの顔を見て、グレイはまさか……と驚いた。

< 233 / 765 >

この作品をシェア

pagetop