心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
マリアがそうつぶやいた瞬間、マリアの身体から黄金の光が溢れてきた。
明るいが眩しくはないその温かな光は、ほんの一瞬で消えてしまった。
しかしマリアの顔の傷が綺麗さっぱりなくなっていることで、十分力を発揮できていたのだとわかる。
「ほぉ……。これは美しいですな。心なしか、私の身体の疲れも取ってくれたようです」
ガイルが感心したような声を出した。
身体の疲れが取れたように感じたのは、グレイも同じである。
治癒の力のおこぼれに与れたらしい。
腕や足に巻いてある包帯を取ってみたが、他の傷も全て綺麗に治っていた。
「やはりすごいな。風呂に入っていないのに、身体や髪までスッキリしている。同時に浄めの力も出ていたのか」
「ふろ?」
グレイの言った言葉をマリアが聞き返してきた。
何も知らなそうなマリアの顔を見て、グレイはまさか……と驚いた。