心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 エミリーに促されて、マリアは部屋から出た。

 長い廊下には、数人の使用人達が立っている。
 メイド達は箒を持っていたり、窓を拭いていたりとマリアの部屋から食堂までの間の廊下を集中的に掃除しているようだ。

 廊下にいる使用人の中には、何もせず壁に背中をつけてピシッと立っているだけの執事もいた。

 皆チラチラとマリアのことを見ているが、決して声をかけてはこない。
 すれ違う時にペコリとお辞儀をするだけだ。

 小さい声で「なんてお可愛いのでしょう」「さすが癒しの聖女様」などとコソコソ話している。

 
「もう……。マリア様を見たいからって、みんなこの廊下に集まってるなんて……」
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