心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
入口にちょこんと立っているマリア。
綺麗な服を着て、髪も整えてもらっている。身動きせずに佇む姿は、まるで本物の人形のようだ。
聖女の力が出ているわけではないのに、キラキラと輝いている。
「わああ!! マリア……すごく可愛い!!」
レオが大きな声を出しながら立ち上がった。
部屋の周りにいる使用人達も、皆「なんて可愛いらしい!」「お人形のようだわ!」と口々にマリアを褒めている声が聞こえる。
そんな中、マリアがちょこちょこと歩きながらグレイの隣にやってくる。
グレイだけが何も言わなかったからか、不安そうな顔で見上げてきた。
「お兄様……変ですか?」
「……変ではない」
俺の妹であるマリアが着飾ったというのに、変なわけがないだろう。
そう思いそのまま答えたのだが、なぜだかレオとガイルから不満そうな視線が向けられている。
ジトーーッと見つめるその目には、グレイに何かを求めている感情がうかがえる。