心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「こちらは人参のポタージュでございます」


 気づけば普段なら顔を出さない料理長が、わざわざマリアの隣に立ち料理の説明をしている。
 チラチラとマリアの様子をうかがっているので、料理がマリアの口に合うのか気になっているらしい。

 体格のいい大男である料理長が小さなマリアを気遣っているのが微笑ましいらしく、その様子を見ていたレオやメイド達がクスクス笑っている。


「いただきます」


 みんなから注目されていることに気づいていないマリアは、目の前に出されたポタージュをゆっくり口に運んだ。

 料理長が緊張した顔で見守っていると、無表情なマリアの顔が一瞬でパァッと輝いた。
 美味しいと感じているのが伝わってくる。

 
「……美味しいか?」

「はい。とっても美味しいです」


 マリアの言葉を聞くなり、料理長は「ありがとうございますー……」と言いながら泣き出したので、グレイはギョッとした。
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