心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「なんだ、いきなり。どうしたんだ……?」

「え? え?」

 グレイだけでなくお礼を言われたマリアも戸惑っていた。


「す、すみません。嬉しくて思わず……!」


 この屋敷で長く働いている料理長だが、ヴィリアー伯爵家の家族は今まで誰1人として彼に「美味しい」と言ったことがなかった。
 その彼にとって、マリアの言葉はとても嬉しかったのである。

 元々涙脆い男なのか、この場にいる使用人たちはみんな驚いた様子もなくもらい泣きしている者までいる。


「良かったですね! 料理長……!」
「ああ……!」


 感動的なシーンに、なぜかレオまで「良かったね、良かったね……」と言いながら目に涙を浮かべていた。



 な、なんだこの変な空気は……。
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