心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 今まで感じたことのない和やかな空気に、グレイは居心地の悪いようなくすぐったいような、不思議な感覚に襲われていた。
 食事が終わったあとに、ガイルが今日の確認をしてくる。

 
「グレイ様、本日はどうなされますか?」

「伯爵家の経営状況や管理情報を教えてくれ。俺もこれからは少しずつ当主の仕事を行う」

「かしこまりました」

「それから……ドレスや子ども服を得意としたデザイナーを呼べ。マリアに合った服を作らせろ。王宮に呼ばれた時のために、聖女としての衣装もいくつか作らせろ」

「かしこまりました。デザインは拝見されますか?」

「いや。マリアとエミリーに任せる」


 グレイとガイルの会話を聞いていたエミリーやメイド達が、わぁっと小さく歓声を上げた。
 目がキラキラと輝いて、やる気に満ちているのが見てわかる。

 自分の家の使用人はこんなに明るい表情をするのかと、グレイは初めて知った。
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