心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
33 マリアの幸せな1日
「はじめまして、マリア様。デザイナーのルシアンと申します。お会いできて光栄ですわ」
「よ、よろしくお願いします」
ルシアンは40代の少し派手な身なりをした女性だ。
初対面のマリアをキラキラした眼差しで見つめているのは、可愛らしい見た目に惹かれているだけでなく聖女だと知っているからである。
瞳の色を見れば気づかれてしまうため、マリアが聖女であることは事前に伝えておかなければいけない。
そのためメイド長であるモリーは、腕がいいデザイナーの中でも特に信頼のおけるルシアンを屋敷に呼んでいた。
エミリーが念を押すように「ルシアン様……」と言うと、ルシアンはウインクしながら明るく笑った。
「大丈夫ですよ。王宮から通達が出るまでは誰にも言いませんわ。では、早速採寸をさせていただきますね」