心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 どうしよう……。
 全部かわいいけど、それじゃだめなのかな?
 そう言ってもいいのかな?



 困っている様子のマリアを見て、ルシアンとエミリーは顔を見合わせた。
 そしてお互い無言のままコクリと頷くと、マリアに視線を戻して優しく言葉をかけた。


「マリア様。思っていることをおっしゃっていただいて大丈夫ですよ」

「何でも言ってください。気に入ったものがありませんでしたか?」


 温かな笑顔の2人を見て、マリアは心の不安が薄れたのがわかった。
 この2人なら自分の思っていることを正直に伝えても怒らないだろう……イザベラと違って。


「ち、違うの。どれもかわいくて……。でもどれがいいのかよく……わからなくて……」


 遠慮がちにそう言うと、2人はホッとしたようにニコッと笑った。
 ルシアンがパタンと静かにカタログを閉じる。
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