心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
ルシアンが帰ると、次に待っていたのは作法の勉強であった。
幼い頃からまともな作法を教わってこなかったマリアのために、綺麗な食事の仕方、挨拶の仕方、身のこなしなどの作法のレッスンが必要だったのである。
これ以上聖女の存在を伝えたくなかったため、グレイは作法の教師は呼ばずに執事やモリーに先生役を頼んでいた。
こんなにすぐレッスンを開始させた理由は、すぐに王宮に行くことになると予想していたからである。
マリアは文句を言うこともなく、真面目にレッスンに取り組んだ。
「はい。そうです。そこで膝を軽く曲げて……ああ、それでは頭を下げすぎです。背中が丸くならないように、このくらいの角度で……」
モリーに言われたことを意識しながら、マリアはこの国伝統である貴族令嬢のお辞儀を披露した。
習ったばかりとは思えないほどの完璧なお辞儀。
その美しさに、モリーだけでなくその場にいたメイド達からはうっとりとした歓声が上がった。