心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 周りに誰かが常にいてくれる。
 自分に話しかけてくれる。
 自分を1人の人として接してくれる。
 笑いかけてくれる、優しくしてくれる。


 それだけでマリアは十分幸せを感じていた。

 グレイがマリアの部屋を訪れたのは、マリアがティータイムをしている時であった。

 ケーキの上にのった苺を食べようと口を開けた時、後ろから「マリア」と呼ぶグレイの声が聞こえて、マリアは思わずフォークを落としそうになってしまった。


「……お兄様!」

「…………」


 振り返ったマリアを見て、グレイは無言のままマリアの口元を優しく指でこすった。
 クリームがついていたと知って、マリアは恥ずかしさから頬を赤く染める。

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