心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 紅茶を淹れ終えたエミリーが2人から少し離れると、グレイは服のポケットから1通の手紙を取り出してテーブルの上に置いた。

 真っ白な封筒には、赤い封蝋が押されてある。


「この印は王宮のマークだ。早速手紙がきた。聖女の登場によほど興奮しているらしい」

「…………」

「俺宛てに届いたものはもう読んだ。これは聖女……マリア宛ての手紙だ」

「マリアに……手紙……」


 初めての手紙に嬉しいような、その相手が自分を連れて行こうとした王宮だという事実に不安なような、マリアは複雑な気持ちになった。
 ただ、その前に一つ大事なことがある。


「ごめんなさい。マリア、字が読めなくて……」

「謝る必要はない。俺が読むから大丈夫だ。……開けるぞ?」


 マリアがコクリとうなづくと、グレイは少し乱暴に封を開けた。
 
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