心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 なんとしても王宮はマリアを手に入れようとしているはず。
 こちらに不利になりそうなことは事前に対策を立てておかなくては。

 くそっ……あのタヌキ陛下(ジジイ)が。



「王宮に行くのは3日後だ。それまでに聖女用のドレスを1着必ず仕上げるようデザイナーに伝えてくれ」


 グレイがエミリーを横目で見ながらそう言うと、エミリーは背筋をピンと伸ばして「はいっ」と元気に返事をした。


「じゃあ、俺は戻る。マリアのことを頼んだぞ」


 紅茶を一口だけ飲むと、グレイは深いため息をつきながら椅子から立ち上がった。
 疲れが出ている顔を見て、マリアは無意識に手のひらをグレイに向けた。

 キラキラと輝く黄金の光がパァッと輝き、グレイの身体を包む。
 周りにいるエミリーやメイド達から「わぁぁ」「綺麗……!」と小さな歓声が上がった。
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