心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「マリア……!」


 グレイが名前を呼んだ時にはすでに、疲れて重くなっていた身体がスッキリと軽くなっていた。

 パッと黄金の光が消える。
 瞳を輝かせたメイド達が興奮気味に騒ぎだした。


「今のが聖女様の癒しの力なのですね!」
「なんて美しい光だったのでしょう」
「この目で見れてとてもしあわ……」


 キャアキャア騒いでいたメイド達は、グレイから送られている氷のように冷めた視線に気づき、一瞬で黙り込んだ。

 全員顔が真っ青になっている。
 そんな彼女達の様子を見て、マリアは焦ってグレイを見つめた。


「あ、あの……」


 冷たい視線は、メイド達を黙らせた後ゆっくりとマリアに向けられた。
 
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