心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「……マリア。その力は簡単に使ってはいけない。特別な力であるし、その力に魅了されてしまう人間も現れるだろう。どこに敵が潜んでいるのかわからないのだから、使う時にはもっと気をつけるんだ」
「……はい。ごめんなさい」
疲れていたグレイに何かをしてあげたいという気持ちから、深く考えずに力を使ってしまったことをマリアは反省した。
シュンとうつむいたマリアの頭に、グレイが軽く手をのせてくる。
そして先ほど聞いた声よりも優しい声でボソッと呟いた。
「だが、ありがとう。おかげで疲れがとれた」
「!」
マリアの頭をポンポンと撫でて、グレイはそのまま屋敷に向かって歩き始めた。