心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「こっちに来い」


 そう命令すると、子どもは戸惑う様子もなく普通に立ち上がり、トコトコと歩いてきた。
 檻の格子の少し手前でピタリと立ち止まる。真っ黒の眼帯のせいで見えていないはずなのに、まるで見えているような動きである。


「動くな」


 グレイは格子の隙間に腕を滑り込ませ、子どものつけている眼帯に触れた。
 子どもはピクリとも反応しない。

 聖女であるかどうかは、実は一目見ればわかるのである。
 聖女だけが、この世界で唯一黄金の瞳を持っているのだと全ての本に記してある。



 瞳を見れば聖女かどうかはわかるはずだ……!
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