心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 グレイが執務室に戻ると、ガイルが分厚い本を数冊机の上に置いていた。
 背表紙には全て『聖女』の文字が書かれている。


「グレイ様。もうお戻りになったのですね」

「ああ。その本はなんだ?」

「過去現れた聖女様がどんなことをされていたのか、が書かれている書籍だけを集めてまいりました」

「……わかった」


 まさにそういった内容の本を持ってこいと命じるつもりだったグレイは、有能すぎる執事に呆れていた。

 自分の考えが全て見透かされているようで居心地が悪い。
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