心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「ガイル。あとでマリアに字を教えるよう、メイド長に伝えておいてくれ」

「かしこまりました」

「それから、現在のこの国の戦況や他国との関係なども詳しく調べてくれ」

「かしこまりました」

「3日でできるか?」

「もちろんでございます。すでにいくつかの調べは終わっておりますので」

「……頼んだぞ」


 グレイの記憶の中には祖父の姿など残っていないが、これだけ優秀な執事を残してくれたことにグレイは感謝した。

 王宮に行くまでの3日間、グレイはほぼマリアと会うことができなかった。
 少しでも時間が空いた時に顔を見に行っていたくらいである。

 あの日以来マリアは勝手に聖女の力を使ってくることはなかったが、マリアの顔を見るだけでグレイは治癒の力を使われたのかと疑うほど元気になった気がしていた。


 そして、とうとうその日がやってきた。
 マリアが聖女として国に認められる日が──。
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