心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 エミリーに手を引かれた先には、眩いほど美しい純白のドレスが飾ってあった。

 ボディス部分は全てレースで覆われていて、細かいダイヤの宝石が飾られている。

 膝下丈のスカートは、薄いシフォンやレース生地が何枚も重ね合わせてあり、ボリュームがあるわりに品が良く見える。

 横にはその下に履くであろうレースのタイツと真っ白の靴が用意されていた。


「マリア様はまだ長いスカートでは不便だと思いますので……と、ルシアン様が考案してくださいました」


 エミリーがにこやかに報告してくれる。
 マリアはスカートの丈が床についていない事に安堵していた。

 慣れないドレス姿では、綺麗な姿勢を保つどころかまともに歩くことすら難しかったのだ。

 ルシアンの心遣いが嬉しい。
 マリアはメイド達に手伝ってもらいながら、美しいドレスに袖を通した。
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