心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「準備は終わっ……」


 部屋に入ってきたグレイは、マリアを一目見るなりピタリと足を止めた。
 グレイの後ろから部屋に入ってきたガイルが「ほぉ〜」と感心したような声を出す。

 メイド達はニヤニヤしたい気持ちを必死に抑え、真顔でいるように努めている。
 だがそんなことをしなくても、グレイの目にはメイドの様子など全く目に入ってはいなかった。

 グレイはゆっくりマリアに近づくと、マリアの目線に合わせて腰を下ろした。
 マリアの黄金の瞳とグレイの碧い瞳が間近でジッと見つめ合う。


「まぁ……」


 その美しい少女と少年の姿に、見ていたメイド達からはうっとりとした声が上がった。
 王宮に行くためにグレイも正装しているため、余計にその光景は目を奪われるほどの美しさであった。
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